ここ数年の時計業界はラグジュアリースポーツブームですが、その人気は留まることを知らず、特に世界3大時計のそれは、もう買うこと自体が非常に困難になっている状況です
先に実機レビューとして投稿したジラールペルゴのロレアートも最近「買えるラグスポ」として注目されています
そこで今回は日本ではあまり知られていない、というか一般では無名に近いジラールペルゴというブランドについてわかりやすく掘り下げて調査してみました
キーワードは4つ
1.超老舗のブランド
2.日本とゆかりの深いブランド
3.歴史の転換点に以外と登場するブランド
4.高い技術力
以下、それぞれ説明します
超老舗のブランド
現在のジラールペルゴの歴史としては2つの流れがあります
それが1906年に合併して今のジラールペルゴとなっています
流れ-その1【ボット社】1791年~
1つ目は1791年から始まる時計・ジュエリー製作で装飾に優れ時計王侯貴族や海外に顧客がいた流れです
- 1791年.ジュネーブにてジャン=フランソア・ボットによる時計製作の開始(当時19歳)
- 時計、ジュエリー、オルゴール等を製作
- 宝石や真珠による装飾に優れ、また薄型時計の最初の製作者の一人
- パリとフィレンツェに支店を持ち、インド・中国・トルコにも納品していた
- 顧客にはビクトリア女王初めとする王侯貴族や著名人がいた
- 子孫に引き継がれ1906年まで事業継続
流れ-その2【ジラールペルゴ社】1852年~
2つ目は1852年に始まる時計製造で技術革新の流れです
- 1852年.コンスタン・ジラールが時計工房を構える
- 1854年.コンスタン・ジラールとマリー・ペルゴが結婚し、2年後ラショードフォンに時計工房を構える
- ジラール家ペルゴ家、共に時計製造の家系であり、両家の結びつきがそれ以降の発展の礎となります
- 1867年.パリ万博(第2回)で金賞を獲得等、時計製造の技術革新の最先端に立つ
買収・合併 1906年~
1906年にジラールペルゴ社がボット社を買収・合併します
この合併により、それまでのジラールペルゴ社にボット社が持っていた特徴やスキルも引き継ぐことになります
- ボット社の美しさ芸術性を引き継ぐ時計製作を行うことが可能になった
- 世界の王侯貴族や著名人の顧客をもそのまま引き継ぐことにもなったーいわゆる箔が付いたー
- 結果としてジラールペルゴ社はボット社の1791年からの遺産も引き継ぎ、創業は1791年からということになった
- 現存する腕時計メーカーで、18世紀誕生というのは6社しかなく、ジラールペルゴ社はその一つになる
ブランパン ⇒ ファーブル・ルーバ ⇒ バシュロン・コンスタンタン ⇒ ブレゲ ⇒ ペルレ ⇒ GP
日本とゆかりの深いブランド
- ジラールペルゴの一族の一人であるフランソア・ペルゴ※が1861年(幕末)に来日し横浜に商館を出す→日本初のスイス時計正規店
- フランソア・ペルゴのお墓が横浜の外国人墓地に埋葬されています
- 毎年命日(12月)には近くの時計店が主体となり墓参の集まりが行われています
※マリー・ペルゴの弟
歴史の転換点に以外と登場するブランド
世界初の腕時計の大量生産
1880年.ドイツ海軍用に腕時計2000本を納品ー世界初の腕時計大量生産
世界初のハイビート(36000振動)の発売
1966年.36000振動の腕時計(クロノマティックHF)を発売
以後、高振動ムーブメントが流行に
スイスクオーツの先駆け→周波数が世界標準に
1969年、セイコーがクオーツ時計を発表しますが、同年、スイス時計としては初のクオーツ時計を開発します
大量生産の競争でセイコーに遅れをとったものの、ジラール・ペルゴが採用した周波数32,768Hzが世界標準になった(セイコーではない!)
高い技術力
マニュファクチュール
創業以来、一度も時計製造を中断することなく、現在もマニュファクチュール(自社一貫生産)という伝統を貫いています
カタログ受領したときに添付されている挨拶文を抜粋します
優秀な時計技術者を擁しているため、何十年を経ても修理ができるため、何世代にも渡ってご使用いただける時計です
これは言い換えると「永久修理に近い」サポートと取れます
念のためメールで確認したところ
時計の状態により絶対的な保証はできないが、可能な限り修理する旨のご回答をいただきました
問い合わせに対しても、しっかりとした丁寧な回答をいただける信頼のおけるブランドだなと感じます
私が会話した正規時計店の方も、このブランドは技術力高いんだということを熱弁されていました
「スイス時計でも本当に自力でムーブメントを作れるのはほんの数社で、その内の一つがジラールペルゴだったんですよ」
世界初のハイビート(36000)振動
「歴史の転換点・・・」で記載のとおりです
複雑機構トゥールビヨンを製作可能な高い技術力
その他の気になるポイント
これら以外でも気になるポイントがあります
なぜ、日本でほとんど知られていないのか?
先ほど書いたように歴史・技術力ともに結構すごいメーカーです
にもかかわらず、日本では無名に近い存在です(時計好きを除いては)
なぜ無名なのか、その理由を私なりに考察してみました
積極的な広告を打たない
企業戦略かどうかはわかりませんが、現在は積極的な広告はやっていません
やっているのかも知れませんが一般的には知られていません
私が知っているのは、2008年に島耕作がイメージキャラクターになったこと位
ただし、クオーツショックまでの広告は資料として残っていますので、少なくとも今のように消極的ではなかったと思います
生産本数の少なさ
正式に公表されていませんが、生産本数はかなり少ないです
推定ですが年間2万本ないと言われています
高級時計の代名詞的な存在のロレックスが50万本~100万本(推定)と言われており、桁が全く違います
格付けとしては時計界の頂点と言われ、熟練職人の手作業の割合がかなり高く、製作に時間と手間を要するはずのパテックフィリップでも5万本(推定)と言われています
いかにジラールペルゴの本数が少ないかわかります
当然、日本へ入ってくる本数も限られて、一部の時計好きのみが知るブランドになっている
リセールバリューは高くはない
認知度が低いことが影響していると思われますが、はっきり言ってジラールペルゴの時計はリセールが高くはありません
ただ、最近のラグスポブームによりロレアートが注目され、今後高くなる可能性はあると思われます
事実、ロレアートは絶対数の少なさもあり日本での在庫が無くなりつつあります
ロレアートのデザイナーの謎
現在ブランドの顔的な存在になってきているロレアートですが、そのデザインは誰がしたのか?
現在は2つの説があります
- ジェラルドジェンタ説
8角形ベゼルがオーデマ・ピゲのロイヤルオークに似ているので - イタリア人デザイナー(アドルフォ・ナタリーニ)説
大聖堂の円蓋をモチーフとした円と八角形を重ねたベゼル
どちらが正解というエビデンスはありません
というのも、実はジラールペルゴ社はこの件について正式には公開していません
今回問い合わせてみましたが、「公開していない」という回答でした
ここからは私の個人的推測です
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デザインに大なり小なりジェンタが何らかの関わりがあったのではないか、と思っています
なぜ、それが公表されないかはわかりません
あくまで個人的な推測なので、発言はここまでにしておきます
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なぜそう思うかというと
私がロレアートについて会話した時計店のスタッフの方が
「デザイナーはジェンタ」
と断言されているのです
1人でなく複数の店舗で、かつ経験豊富なベテランの方の発言です
真相は闇の中、当時を知る関係者もドンドン減っている・・・
この妄想も個人的には楽しいです
ケリンググループからの脱退
ジラールペルゴは、グッチ等世界的有名ブランドが属する世界3大グループ企業であるケリンググループに所属していました
それが、この度同じグループに属するユリスナルダンと一緒にグループを脱退することになりました
そもそもケリンググループの時計部門であったソーウィンド社にユリスナルダンとジラールペルゴが属しており、今回そのソーウィンド社がグループから抜けることになった
これにより、時計メーカーのみのグループとなり経営方針(広告や生産本数)が変わる可能性があります
代表的なモデル
ビンテージ1945(1996年)
現在は、ラグスポブームの影響からロレアートの方が注目されていますが、長年メインを張ったのはこのビンテージ1945だと思います
- 1945年当時のレクタンギュラー形状のモデルを復刻させたもの
- 湾曲したケースによるアールデコ調のレトロな優れたデザインと着け心地が人気の秘密
- 立体的なスモールセコンドも魅力の一つ
- ケースの湾曲に合わせてサファイアガラスを曲げる技術も必要で当然コスト増、値段もそれ相応となる
- 湾曲したケースはムーブメントを薄くする技術力があったからこそ実現でき、ジラールペルゴの技術力の証明でもある
- 1990年代に発表されており、昨今の復刻ブームの先駆け的なモデルと言う人もいる
ロレアート(初代は1975年)
現在ブームであるラグジュアリースポーツモデルの黎明期の作品のDNAを引き継ぐモデル
現在のジラールペルゴの顔的存在
詳細レビューはこちら
1966オリオン
夜空に輝く星々ーアベンチュリンダイヤルがとにかく美しい!
まとめ
以上がジラールペルゴについて調べた内容となります
簡単にまとめますと
・18世紀創業の超老舗のブランド
・日本とゆかりの深いブランド
・歴史の転換点に以外と登場するブランド
・高い技術力を持ったブランド
いかがだったでしょうか
皆さんの時計選びの参考になれば幸いです
では、楽しい時計ライフを!
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