腕時計で流行りのラグジュアリースポーツ(略してラグスポ)
一般的に言われているのは、元祖的なロイヤルオーク(オーデマ・ピゲ)やノーチラス(パテックフィリップ)が代表格だと思いますが
それらには共通する特徴があります
一方で時計に興味ない人でも知っている、高級時計の代名詞的な存在のロレックスには、その特徴を持ったモデルはしません
が、ラグジュアリーなスポーツという言葉だけの意味では「ヨットマスター」というモデルが存在します
そこで、それらモデルの特徴を実機も含めて比較して、「ロレックス目線で」ラグジュアリースポーツを掘り下げてみたいと思います
あくまで、個人的な見解であり、あるモデルをディスったり、持ち上げたりするような意図はありませんので、ご承知おきください
結論を先に言うと
結論としては主に以下の3つというのが個人的な感想です
①ヨットマスターと「ラグスポ」とは誕生背景・デザインが異なる
ヨットマスターはその流行とは全く別のラグジュアリー路線として誕生しており
その背景からして、いわゆるラグスポとは、違っており、当然デザインも違うこと
②ラグスポブームのきっかけはデイトナ
いわゆる最近流行のラグスポブームは、ロレックスのデイトナ人気の沸騰がきっかけとなった
③今後のロレックスはさらなるラグジュアリー化?
ロレックスが目指しているのは、雲上ブランドに並ぶようなラグジュアリーブランドになることではないか?
ということです
ラグジュアリースポーツって?
ラグジュアリースポーツには大きく2種類あると考えています
【その1】ロイヤルオークを元祖とする最近流行りのラグスポテイストを持ったもの
【その2】それら流行りの流れとは明らかに違う、ラグジュアリーなスポーツモデル
まずは、その2つについて簡単にまとめてみると
その1:最近流行りのラグスポ
ラグジュアリースポーツ(ラグスポ)とは何ぞや?
調べてみても明確な定義は無いようですが
一般的に言われているラグジュアリースポーツの定義としては、以下のようなものだと私は理解しています
①高級ドレスウォッチメーカーが出したスポーティなラグジュアリーウォッチ
②スポーツウォッチの特徴を持つ
素材はステンレススティール製、防水は50m以上
③ラグジュアリーなドレスウォッチの特徴を持つ
薄型ケース、細目の3針、バーインデックス
④ケースとラグ*1・ベルトが一体型であり、その繋ぎ部分の形状が特徴的
*1.ケースとブレスレットをつなぐ部分
代表的なモデル
ロイヤルオーク<オーデマ・ピゲ>
ノーチラス<パテックフィリップ>
これらのモデルは、①~④すべてを満たしています
ただし、これら以外のモデルでも、いわゆる「ラグスポ枠」としてたくさんのモデルが今は存在します
その枠に入る条件は4つの条件の内、②~④が当てはまっていればラグスポと呼ばれています
例えば、現在大人気のモーリスラクロアの「アイコン」、というモデルがありますが
①を除けば、条件を満たしているため、お手頃価格な「ラグスポ」として広く認知されています
引用元:モーリスラクロアHP
その2:ラグジュアリーなスポーツ
【その1】のような、昨今流行りの「ラグスポ」ではなく、言葉どおりの
「ラグジュアリーなスポーツ」
として語られるモデルもあります
これらは、【その1】の4項目とは関係なく
「スポーツモデルの高級版」
だったり
「スポーティでありラグジュアリーである」
「ある程度フォーマルな場でも使え、遊びの外出でも使える」
的な意味合いが強いと思います
そういう意味では、かなり多くのモデルが当てはまって来るのではと思っています
例)スポーツモデルの中でも高価格帯のモデル<デイトナ等>
ロレックス・ヨットマスターの位置づけ
ロレックスの「ヨットマスター」は【その2】に分類されるかと思います
ただし、その中ではヨットマスターはちょっと変わったところがあると感じています
【その2】の特徴は
スポーティであることが条件のため「ステンレスモデル」がメインであること
です
しかし、ヨットマスターは
「貴金属モデルを素材としてスタートしている」
ということです
引用元:楽天
明らかに富裕層をターゲットにして、モデルのコンセプトとしてラグジュアリー感を全面に出したモデルです
#現在はケースがステンレスのものも存在しますがベゼルはプラチナです
ここが、他のスポーツモデルとは違うところだと思います
そのためか、ヨットマスターは
「ロレックスにおけるラグジュアリースポーツ」
という表現もよく見かけます
ラグスポの特徴との比較
【その1】【その2】の特徴を書きましたので、せっかくなのでヨットマスターと【その1】の違いを具体的に見てみたいと思います
【その1】のラグスポの特徴は4つと書きましたが、ここでは、そのうちの3つ(②~④)について比較していきます。
※①が当てはまらなくても「ラグスポ」と呼ばれていますので、①は外しました
②スポーツウォッチの特徴を持つ?
こちらは「〇」です
ヨットマスターはベゼルはプラチナ製ではあるものの、それ以外は全てステンレススティール製ですので条件はほぼ満たしていると考えてよいかと思います
また、防水性も「100m」あるため、こちらもクリアしています
他のラグスポ系のモデル
・ロイヤルオーク=50m
・ノーチラス=100m
・オーバーシーズ=150m
・ロレアート=100m
③ラグジュアリーなドレス?
<薄型ケース><細目の3針><バーインデックス>
こちらは、3つの内明らかに2つに関しては、ヨットマスターは当てはまりません
③-1.薄型か?
→△微妙
ヨットマスターのケース厚みは「12mm」です
厚い方ではないですが、他のラグスポモデルと比較すると厚い方ではないかと思います
他のラグスポ系のモデル
・ロイヤルオーク=8mm(ジャンボエクストラシン)
・ノーチラス=8.3mm(5711/1A-010)
・オーバーシーズ=11mm(4500V/110A-B128)
・ロレアート=10.7mm(81010-11-131-11A)
ロレアートと並べてみると、ロレアートが薄く感じます
左:ヨットマスター、右:ロレアート
並べて置くと、余計にロレアートが薄く感じます
左:ヨットマスター、右:ロレアート
これは、ケースだけでなく、ベルト含めた全体の作りの「コンセプトの違い」を感じてしまいます
③-2.細目の3針か?
→×
ヨットマスターの針は若干太目で、短針はコブラ針です
左:ヨットマスター、右:ロレアート
ラグジュアリーかどうかは微妙なところですが
ドレッシーではなくスポーティだと感じます
③-3.バーインデックスか?
→×
丸形のいわゆるドットインデックスです
左:ヨットマスター、右:ロレアート
こちらも針と同じく、ドレッシーではなくスポーティだと感じます
④ケース・ラグ・ベルトが一体?
→×
ケースとラグは一体型
ではあるものの
ラグ・ベルトは一体型ではない
左:ヨットマスター、右:ロレアート
ロレアートのようなラグ・ベルトの一体感はない
比較結果
結論としては、デザインや機能の面からも、今流行りのラグスポとは明らかに異なることがハッキリしました
歴史から見たラグスポとロレックスとの関係
先に書いたように、ロレックスにはいわゆるラグスポテイスト【その1】のモデルは存在しませんが
その歴史を見てみると、以外なところで関係があったりします
簡単に言うと
ポイントを整理すると3つです
①もともとレベルの高いモデルが存在していた
そもそも時計としてのレベルが高いモデル(ノーチラス・ロイヤルオーク)がブラッシュアップにより、2012年頃から徐々に流通価格が上がりだした
②デイトナ人気により、ラグスポブームに火が付いた
2016年の現行デイトナの登場及び人気アップにより、以前から人気が上がりつつあったノーチラス・ロイヤルオークも注目されるようになり人気が加速された
※それまで手が出しづらかった雲上ブランドのノーチラスの価格とデイトナが肩を並べるようになり
「その金額出すんなら、世界最高峰<パテックフィリップ*1>買った方がいいんじゃね?」
となり、逆にノーチラス購入を考える人達が増えた
という構図
*1.あくまで「ブランドの格」としてはロレックスよりパテックフィリップの方が遥かに格上です
時計界の格付けトップはパテックフィリップ
③いわゆるラグスポブームとヨットマスターとは直接的な関係性はない
これら3つはラグスポとロレックスの歴史を見てみると分かります
大まかな歴史
ラグスポとロレックスの大まかな歴史を抜粋してみると、以下のような感じです
これからラグスポブームとロレックスの関係性が見えてきます
ヨットマスターとラグスポとは直接的な関係性はないですが、2016年のデイトナモデルチェンジを境にデイトナとラグスポブームとは明らかに関係があると分かります
(YM:ヨットマスターを指す)
ラグスポ歴史 | ロレックス歴史 | ||
1972年 | ロイヤルオーク誕生<ラグスポ元祖> | ||
1970年代 | ノーチラス等のラグスポ黎明期モデル誕生 | ||
1988年 | デイトナ(16520)登場 →プレミア価格で流通しだす | ||
1992年 | 初代YM(ゴールド系のみ) | ||
1999年 | YMプラチナコンビモデル→人気に | ||
2000年代 | ノーチラスがブラッシュアップされ人気度アップ | 2000年 | デイトナ(116520)登場 →プレミア価格継続 |
2012年頃 | ノーチラス(5711/1A)徐々に価格アップ | 2012年 | YMブルー追加 |
2013年頃 | ロイヤルオーク(15300ST)徐々に価格アップ | ||
2015年 | YMERGコンビモデル | ||
2016年頃 | この頃から類似モデルが一気に出てくる | 2016年 | デイトナ(116500LN)登場 →さらに人気度アップ |
それ以降「デイトナマラソン」現象(*1)が起きる | |||
2016年 | YMダークロジウム(スレート) | ||
2017年 | ノーチラス、ロイヤルオーク高騰始まる | ||
2019年 | 現行YM新キャリバー |
↑やっぱり腕時計界の中心はデイトナ↑
ロレックスはラグスポの流行りに乗らないのか?
ここで個人的に気になっているのが、世界的なラグスポの流行の流れには乗らないのか?
ということです
せっかく今起きている世界の流行です
商売としては、乗るのが普通かと思います(^^;
現に他ブランドが、思いっきり、その流れに乗ったモデル(上述の②③④を意識したもの)を沢山発表しています
・・・
そこは、安直に流れに乗らないのがロレックスたる所以なのでしょうか
あからさまな流行ラグスポモデルは出していませんね…
ヨットマスター以外でも上述の②③④を意識したモデルは出ていません
個人的予想
個人的にも、今後上述の②③④を意識したモデルは出さないと思います
流行りに乗らない、「逆に流行りを作る」のがロレックスだと感じています
#そもそもデイトナがラグスポブームのきっかけを作っている
#ターコイズブルーを代表とする最近のポップな色合いのダイアルもロレックスが最初
引用元:ロレックスHP
これは、確かな根拠もない、本当に個人的な予想なんですが
ロレックスは今後
「ラグジュアリー路線を進める」
「そして行く行くは名実ともに雲上ブランド(*1)に肩を並べる」
*1.世界3大時計または5大時計ブランドと呼ばれ、ロレックスはその中に入っていない
そこを目指しているのでは?
と思っています
なぜかと言うと
そもそもが、「実用時計の最高峰」を目指していたロレックスです
精度や防水、磁気対策等、実用面では、すでにほぼ「完成の領域」に達していると思います
#機械式の弱点である精度でさえ、現在はクオーツに迫る数値になっている
あと追及できるのは
芸術性(高級感やラグジュアリー感)
くらいかと思います
その証左として
最近のロレックスはクオリティが上がり、高級感がかなり増しています
例)ベゼルのセラミック化、ベルトの質感剛性アップ
2000年ころまでのモデルはベルトも今に比べかなりチープでした(^^;
さらに
2023年の新作として発表された「1908」というモデル
引用元:ロレックスHP
おそらく、ドレスウォッチの従来ライン「チェリーニ」の後継だと思いますが
薄型でデザインも洗練され、世間の評判も良く
これからロレックスがかなり力を入れるのでは?と想像されます
引用元:ロレックスHP
#正直、私はチェリーニは今一つでしたが、今回の1908は私も欲しいと感じてしまいます
#簡単に変える金額ではありませんが…
この「1908」への力の入れ方が、ロレックスの意気込みを感じます
まさに「ラグジュアリー路線に力を入れている」感じが私はしてしまいます
今後のヨットマスター
個人的には、このような流れを感じており、今後のヨットマスターには注目しています
なぜなら
ロレックスのスポーツモデルの中で
「最初からラグジュアリー路線」
がヨットマスターだからです
こぼれ話
ロレックスでは流行のラグスポテイストのデザインはないと書きましたが、実は昔のモデルでは存在します
デイトジャスト1630
このモデルは
オイスターケース50周年の記念モデル
であり
実は、このモデル、ジェラルドジェンタのデザインと言われています
現在中古で販売はされているようです
☞Chrono24でも出てきます
画像見ると、まさにラグスポ【その1】のまんまのデザインです(^^;
そして
ジェンタもオイスターケースをリスペクトしていた
というのは結構有名な話です
まとめ
以上がロレックス・ヨットマスター目線で見たラグジュアリースポーツについです
まとめると
①ヨットマスターと「ラグスポ」とは誕生背景・デザインが異なる
ヨットマスターはその流行とは全く別のラグジュアリー路線として誕生しており
その背景からして、いわゆるラグスポとは、違っており、当然デザインも違うこと
②ラグスポブームのきっかけはデイトナ
いわゆる最近流行のラグスポブームは、ロレックスのデイトナ人気の沸騰がきっかけとなった
③今後のロレックスはさらなるラグジュアリー化?
ロレックスが目指しているのは、雲上ブランドに並ぶようなラグジュアリーブランドになることではないか?
ということです
ロレックス及びラグジュアリースポーツモデルの購入等の参考になれば幸いです
では、良い時計ライフを
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